劇団銅鑼公演 No.35
作:杉本美鈴
演出:鈴木真理子
演出補:山田昭一
「来るものは拒まず」をモットーにしている女主人・春子は上板橋のとある場所で下宿屋「エイジアン・パラダイス」を経営している。
そこにはゲイバーママの英男、フィリピンパブホステスのアナベル、中国人と日本人のハーフ美華、東大留学生タイ人のスジンダが住んでいた。
今日は毎月一回催しているパーティの日。
アナベルの友人エバンも来て準備をしていると、そこへ慎一郎が突然やってくる。ルポライターを名乗る彼は、風の噂で怪しい外国人が住んでいると聞き、取材に来たのだ。
そこへまた美華の恋人の延彦がやってくる。
美華が中国人である自分のことを隠していたとも知らず英さんがしゃべってしまったから、さぁ大変。延彦は怒って帰ってしまい、美華は閉じこもったきりでてこない。
騒動の中、近所のマンションから頼子がやってくる。
住人から苦情が出ているというのだ。
いかがわしい商売をしているなんて言われて、春子は自分の生い立ちのことを話し始めた・・・。
『エイジアン・パラダイス』の舞台は、阪神淡路大震災、サリン事件など日本を揺るがす事件が起こった1995年。
その頃、街にはアジア系外国人が目立つようになってきていた。
劇作家・杉本美鈴は韓国大使館の近くに住み、学友にも韓国人がいたが、それ以外の町で見かける外国人に対してどうしてもうさんくさく思ってしまう部分が自分の中にあることに気づく。
これは外国人を理解しているようで、日本人の心の中にみんな持っているものでは?と。
そこから歴史を紐解いていくと、しらなかったこと、ショックなことが次々と出てきた。
そして中国残留婦人、残留孤児に辿り着く。
今に繋がるこの真実を伝えたい。でも、この重い題材をそのまま劇化しても誰が見てくれるだろうか・・・。
重いテーマを楽しく、明るく、そして深く描くには・・・。
中国残留婦人の春子が営む下宿屋に、いろんな事情を抱えたアジア系外国人が集まってきた。
本日は、お忙しい中、エイジアン・パラダイスにようこそお越しくださいました。
このたび、沢山の皆様の応援で、エイジアン・パラダイスが再演となりましたことを、この場をお借りして心からお礼申し上げます。
初演の際、「重いテーマをおもしろく観られた」「楽しんで、そして考えさせられた」というようなご意見をいただき、とても励まされました。
「中国残留孤児」は知っていたけど、「残留婦人」は知らなかった。日本の国の「国策」で、中国へ渡り取り残された人たちがいた。そして今も、帰国したこの国で苦しんでいる。
近頃、街に「ガイジン」が増えたけど、あの人たちはどこから、どういう理由で来たのだろう?
私が疑問に感じていたこと、知って驚いたことを、他の人たちにも知ってもらいたい、共感してもらいたい、一緒に考えてもらいたい、そんな想いから、この作品は生まれました。
エイジアンパラダイスは、その名の通り、「理想郷」です。
きれいごとと言われようと、私はパラダイスを描き続けて行きたいと思っています。
人間は、まず、夢を、理想を、思い描くことで、それを実現してゆけると信じるからです。誰かが空を飛ぶことに、思いをめずらしたからこそ、今、飛行機があるように。
日本は経済大国と言われていますが、私たちの多くは、ストレスの多い社会で、日々の生活に追われ、自分のことだけで、いっぱいいっぱいだったりします。
でも。
ほんの少しでも、他の人たちを思いやる、そんな余裕が持てたら素敵ですよね。
どうか、この舞台がそのエネルギーの源になりますように!
上演時間:2時間(休憩なし)
谷田川 さほ 2005年初演~2010年12月
竹内 奈緒子 2005年初演~2006年12月
馬渕 真希 2007年6月~2010年12月
庄崎 真知子 2005年初演~2010年12月
佐藤 文雄 2005年初演~2008年12月
井上太 2009年9月~2010年12月
中嶋 涼香 2005年初演~2007年10月
柴田 愛奈 2008年9月~2010年12月
小出 亘 2005年初演のみ
久保田 勝彦 2006年11月~2010年12月
天海 武 2005年初演のみ
中山 陽介 2006年11月~2010年12月
黒宮 稠 2005年初演
説田 太郎 2006年11月~2007年10月
井上 太 2008年9月~12月
植木 圭 2005年初演・2009年9月~2010年12月
三田 直門 2006年11月~2008年9月~12月
鈴木 啓司 2009年9月
郡司 智子 2005年9月~2010年12月
黒田 志保 2005年初演~2006年12月
鶴岡 秀一 2007年6月~2010年12月